カーリング・終戦

女子カーリングの最終戦であるデンマーク戦が終わった。
5-7で最後も敗戦だった。
こんな言い方をするのも何だが、予想通りの結果となった。


最初にカーリングを見たのは、長野オリンピックのときだった。
当時の男子日本代表の試合をたまたま見て、よくわからんがなんかすげー面白い、と思ったのが第一印象だった。
とは言っても、常呂ならいざ知らず、東京ではオリンピックくらいしか見かける機会がないので、
冬季オリンピックが来るたびに思い出して、オリンピックではいつも見ている競技。
今大会は、ちょうど留学先のバンクーバーでやっていたこともあり、
会場でも一度(会場が家から徒歩15分くらいのところなので)、
それ以外も日本の試合は一通り観戦してしまった。
そこまで一生懸命見るつもりもなかったんだが、あまりにも面白いので、学校サボってずっと見てたりした。


全部で9戦くらい見ていて、だいぶこの競技がわかってきた。
この競技のミソは2つ。
・先攻時にいかに一点を取らせるか
・後攻時にいかに二点を取るか
これをいかにきっちりできるか、ということで勝負は決まってくる。


ティール(先攻時に得点をあげること)なんて狙ってはダメ。
そもそも交互にストーンを投げて、最後の状態で得点が決まるんだから
ティールなんて相手がミスすることが前提の状態なんですよ。
だからそんなの狙って作戦を立てると勝負どころを間違える。
あくまでNice to haveで行かないと致命傷になる。


昨日のスイス戦なんてまさにこのセオリー通り。
毎エンド先攻後攻が入れ替わってるんだけど、日本が取っているのはいつも一点。
Yahooの速報とか見てると、「日本一点を返す!」みたいな口調で書いてあるけど、
実際は一点取らざるをえない状況に追い込まれて、後攻の権利を奪われているだけのこと。
で、先攻時に「スティール狙ってこ!」みたいな感じで始まり、
最後のスイスの一投で全部持ってかれて大量失点という展開だった。


ほとんど全ての試合をCTVのインターネットLiveで見ていたのだが、
おそらく各国に配信されているコンテンツなので、
無駄な解説とかもなく、選手の声を丸々拾ってくれる。
これが非常に面白い。
相談の内容を全部聞けるので、局面局面で何考えて投げているのか全部わかるのだ。


それを聞いていて確信したのは、日本は明らかに実力不足だな、ということ。
Yahoo!Japanのニュースとか本人たちのコメントを見ていると、
日本が負けたのは
・経験不足(世界選手権に出れなかったから)
・投球の精度が低い
・氷の読みが甘い
・スキップ目黒選手の統率力がない(目黒の決定にみんな不満そう)
・阿部コーチの指導力不足タイムアウトの際に、メンバーにタメ語聞かれて指示(というか意見)を否定される)
というような理由、ということになっているみたいだが、
どれもなんだか本質的ではない気がしている。


「経験不足」
世界選手権に出られなかったのが原因、というなら、その時点で実力が足りていないわけで、
経験不足だから実力不足という因果関係にはならず、ただ単に実力不足でしたと言っているに過ぎない。

「阿部コーチの指導力不足
試合中にコーチが出てこれるのはタイムアウトの二回だけなので、試合への直接的な影響力は軽微。
タメ口云々や弁当パシリの話は表面的な関係性の話なので、だからダメという話ではないはず。
それで信頼を勝ち得ているのであればそれでいいし、雰囲気的には全然オーケーのように思う。
そもそも選手と2-3歳しか違わないのだから、目上然としてうまくやれ、という方が無理がある。
現体制の中で考えれば、そのくらいの方がベターなんじゃなかろうか。

「目黒の統率力」
阿部さんの話ともつながるのだが、飛びぬけたキャリアを持つ人(ベテランと言われる人)がいない中で、
みんな好き勝手言い合う、という関係性はそれはそれでアリだと思う。
恐れ知らずの可能性を最大限引き出すにはそちらの方がいい、という考え方もある。
今いるメンバーの中では、スキップに適任なのは目黒しかいないと思う。

「投球の精度」
数字だけを見ると、強豪国に比べて確かにかなり低い。
ただ面白いのは、いつもズレるかというとそうでもない、ということ。
ノッているときには、すごいショットがパシパシ決まる。
特に目黒・本橋。
ショットの体勢とか見てても、重心も十分落ちているし、強豪国と見劣りしないくらい安定している。
強豪スイスの選手でも投球時にバランス崩してこけていた人もいたし、安定感はあるような気がする。
そこに違和感。
ただ単に練習が足りない、というだけじゃないんじゃないか、という気がするのです。
ま、(こういう引き合いに出すのも何だが)山浦とかはいつも微妙にずれるので、これは本当に要練習なんだろうな、と思う。

「氷の読みの甘さ」
これは正直よくわからない。
そもそも技術としてどういうものなのかよくわからないので。


、、、とどれも何か違う印象。
俺は今回の敗因について、上で語られているようなこととはちょっと違うことを思っていて、
それは「戦略不在」。
各エンドで、何点をどのような形で取りに行くのか、それとも捨てにいくべきか、
というような戦略がイマイチなかったように思えるのだ。
なんとなく漠然と
一点より二点がいい、スティールできるならスティールしたい、
という発想で作戦が構成されていたような気がしてならない。


9試合も連続して見ていると、なんとなく気づくのだが、
(先攻で)相手に一点取らせに行く陣立て、(後攻で)二点取りに行く陣立て、三点以上を狙いに行く陣立て
はどれも全然違っていて、ある程度パターン化されるように思える。
強豪国は局面局面でそれをしっかり使い分けているような印象。
それを一番感じたのは前述したスイス戦で、
日本が一点を取らされたエンドは、スキップのターンでどれも同じような形になっていた。
一点取るか三点取られるか、みたいな状況に追い込まれ、結局一点取らざるをえない、ということになる。


そういうことを日本はできていなかった。
結果を見てもそうだし、本人たちの会話を聞いていてもそう。
象徴的だったのが、ドイツ戦での一コマ。
ファーストの石崎がガードを2つ置いて(ハウス内には両軍ともストーンなし)、
その局面でスキップ目黒の発した一言。
「ここ(ガードの裏)に一個置いてみたらどうかな?」
それを聞いて、びっくりしたのと同時に、なんだか全てが納得できた。
ものすごくベーシックな状態なのに、定石手というものがないんだ、
これ、一投一投その場その場で考えてるな、と。
これでは偶然ハマらないと勝てないし、まして総当たり戦では勝ち抜けないな、と。


投球の精度という話についても
定石手をチーム内で共有できていないから毎投球ごとに議論になる→時間が削られる→思考時間が制限されてくる
→中途半端な理解で投球→ブレる→再度議論→余計時間がなくなる・・・
ということで説明がつくし、選手の声を聞いていると、間違いなくそんな感じ。
定石手のところは推論としても、
毎回議論→時間がなくなる→議論が終わらないまま投球(「時間ないよー」の声で投球に入ることがたまに見られた)
という流れはよく見かけられた。
強豪国と対戦しているときに比較するとよくわかるのだが、
時間の減り方が全然違っている。10分近く差がついていることも。
つまり強豪国は議論をほとんどせずに投球していることが多い、ということだ。


もし、俺がスキップだったら、
過去の棋譜(?)を分析して、ある程度パターン化して、頭に一通り叩き込むだろうな。
それを元に自分たちの定石手を作る。
それでだいぶ変わってくると思うのだが。


いろいろ書いたが、自分としてはチーム青森にいろいろ楽しませてもらった。ありがとう。
泣く必要なんてない。
胸を張って日本に帰って欲しい、と思います。
またソチでも目黒の雄姿がみたいものです。


それにしても、目黒の投球前の所作はいつ見ても美しい。
あれを見ていると、茶道の所作を思い出す。
投球時のフォームも形としてのバランスが取れていて、すごく美しい。
あれだけ形としてよくできているのに、
投球技術のレベルが低い、というのは直感的に何かおかしい気がするんだよなぁ。


もひとつそれにしても。
ハーフタイムにおやつ食べてるオリンピック競技って他にないだろうな(笑)
今日は山浦がバナナ、デンマークに至ってはディップアンドチップスを頬張っていた。
しかもタッパで持ってきてた。。。
そういうディテールこそ面白い。